「いらっしゃいませ〜」
12月29日、時刻は23時30分頃
ドアが開くと春名先生が1人でやってきた。
「みぃちゃんで…」
春名先生は飲み放題のコースを選んでくれた。
「来てくれてありがとうございます」
ニコッといつもの作り笑顔をする。
もうお店ではこれが普通だから仕方がない。
「また来るって書いただろ?」
「そうですけど…」
「ドリンク入れていいよ」
「ありがとうございます」
未央は自分の分の烏龍茶を持ってきた。
「0時になったらシャンパンを頼もう、20歳だよな」
「えっ、何で誕生日…」
SNSにも誕生日は公表していないのに?
キョトンとしていると春名先生が話し始めた。
「未央、あっ、みぃちゃんはさ、俺と会ったのが高校の時と思っているだろう?」
「はい」
「小さい頃の記憶はないかなぁ、よく遊んでたんだけど」
「いつ頃ですか?」
小学校低学年くらいと先生は答えた。
「ブランコによく乗ってたんだけど?」
ブランコ?私ブランコは怖くて乗れなくてって母親から聞いたことが…
「どこかの公園です?」
「いや、俺の家の庭なんだけど…赤いブランコ」
「赤い…あっ、後ろから背中を押して…」
「そう、ブランコが怖いって俺がゆっくり押して乗ってたんだよ、ブーンて漕ぐことは出来なかったけどな(笑)」