「引越し?」

「未央、本当にごめん!」

謝っているのは安永未央(やすながみお)の父親

建築会社の社長でそこそこ裕福な生活だったお嬢様育ちの未央

父親が友人の借金の保証人になりこの家が担保になっているらしい

未央は大学1年生、夏休み中に親からの連絡で実家に帰ってきたところだ。

「私は大学を辞めなきゃだめなの?」

「1年の授業料は払ってあるけどそれ以降は…」

「今住んでいるマンションは?」

「それも今引っ越しをすると違約金がいるんだ…」

「そう…」


のんびり屋の未央でも頭の中でしばらく考えた。


未央の下には弟がいる。

世間知らずであまり理解できてない未央だが、親は離婚して母子家庭として母親と弟は引っ越すという…

すでに家の中は幾つか段ボールが積まれていて準備は始まっているようだった。


弟は部活に行っているらしい。

「頑張って働くから」と父親は言ったがとりあえず生活費を確保しないといけないという強い思いが未央ののんびりとした性格を変えた。

「私の事は大丈夫だから心配しないで」

「でも…」

バイトをするからと両親に告げ、自分の荷物は段ボールに入れて今のマンションに送って欲しいとお願いした。