朝明の静けさの中、目覚める紗奈を優しく抱きしめてくれる暖かい感触に、だんだんと意識が浮上してくる。

「おはよう。」

「…おはよう、ございます。」
微睡む景色の中で、悠人と目が合って微笑みをくれる。その笑顔になんだかとても幸せを感じて、紗奈は嬉しくて微笑み返す。

「…体は、大丈夫か?」
「…はい…多分…。」

少し交わす言葉からでも醸し出す、甘い優しい雰囲気に、この人が本当に私の夫?なのだろうかと、疑ってしまうほどだった。

「どうする?今日はこのままのんびりでもいいし、どこかに出かけてもいい。どちらにするかは紗奈次第だ。」

「えっ!お出かけしたいです。」
これまでお互い時間がなかなか合わず、デートらしいデートはして来なかったから、紗奈は嬉しくてつい声が弾む。

「分かった。じゃあ、とりあえず風呂に入るか。」
フワッと毛布ごと抱き上げられて、部屋付きの露天温泉に連れて行かれる。

「ちょ、ちょっと…悠人さん…恥ずかしい。ひ、1人で入れます。」
紗奈はジタバタして、その手の中から逃れようとするのに、容赦無く毛布を奪われ身ぐるみ剥がされる。

なんだかんだと抵抗虚しく、優しく身体を洗われて、なんだかんだと触れられて…煽られて…気付けば背中から抱き寄せられ露天風呂に浸かっていた。

「…悠人さん…イジワルしてますか…?」
いろいろ知らない顔を見せられて、紗奈は戸惑いを隠せないでいる。

「妻を愛でてるだけだよ。何が悪い?」
悠人は当たり前かのように言う。

「何だか…急展開過ぎて…頭がついて行けません。」
くたりと悠人にもたれかかる。

「やっと堂々と愛でる事が出来るんだ。しばらく許せ。」
そんな旦那様はまだまだ物足りないようだけど…。