びっくりして目を見開いた紗奈は、咄嗟に悠人の腕に飛びついてしまう。

丁度良いと思った悠人は、軽々しく紗奈をお姫様だっこしながら教壇の前に連れて行く。

そして、どこからともなく神父が現れ、定番のセリフを2人の前で披露する。

「汝は、良き時も悪き時も、病める時も健やかなる時も、 共に歩み、死が二人を分かつまで、愛を誓い…。」
知らなかった紗奈はもちろん、ぶっつけ本番同然で戸惑いながらも、見様見真似で返事を返す。

ちゃんと結婚指輪も用意されていて、またびっくりする。

全ての式が終わって…。
そういつもと変わらない1日を過ごすつもりだった紗奈は、なぜか海沿いのリゾートホテルのバルコニーで海を眺めていた。

一棟貸切のビィラは部屋に温泉が付いていて、夕飯は豪華なフレンチのフルコース。こんな贅沢を今までした事が無かった紗奈にとって、夢のような1日だった。

「どこに行ったかと思えば…。風が冷たい、湯冷めをするぞ。」
悠人が紗奈を見つけて駆け寄って来る。そして、夜風が冷たかろうと、背後から抱き締めるように囲う。

つい先程結婚式を終え、入籍を済ませて晴れて夫婦になったばかりの2人は、まだまだ初々しさが残る。