夕方、彼女が帰宅する頃を見込んで、西宮家に車を走らせる。

到着して、車を駐車場に停める。家の灯りを見つめて、彼女に会えると心が弾む。
が、玄関先に1人の男がいるのに気付く。
あいつは…佐伯か…。

もう用もないのに、なんであいつがここにいるんだ?俺はそう思いながら何食わぬ顔で車を降りる。

「どうかされましたか?」
俺は何気なさを装って佐伯に話しかける。
「…松永さん、どうもこんばんは。ちょっと紗奈ちゃんに用があって。」
こいつはまだ俺に嘘がバレていないと思っているのだろうか?そう思いながら俺は話を続ける。

「紗奈なら多分居ると思いますが、どのようなご用件ですか?」

「俺実は…彼女とは付き合ってなくて…だけど、これを機に告白しようかと…職場も違うから、あれからなかなか会えなくて…。」
この男の考えはよく読めないが、同じ同志同士少しの憐れみを持つ。

「…入れば?俺がいない方が良いなら時間潰して来ます。」
敵に塩を送ってどうするんだと思うが、決めるのは紗奈で俺に権利は何もない…。

少しぶらぶらして時間を潰すかと俺は車を置いて、近くのコンビニへと足を運ぶ。

数十分後…
今更戻り辛くなって来た俺は、近くの公園まで足を進めていたところにスマホが鳴る。

誰かと思って出て見れば紗奈で、
「どうした?」
と、急ぎ出る。

『松永さん…どこ、行っちゃったん、ですか?』
はぁはぁと息を切らして話す声、
「紗奈何してるんだ?どこにいる⁉︎」
俺は嫌な予感がして呼びかける。

『松永さんが…車あるのに、いないから…。』

「だからってこんな暗いのに、1人で出歩くなよ。」
俺は紗奈の家に向かって走り出す。

『だって…松永さん、なかなか、帰って来ないから…心配で…。』

「俺はいいんだよ、この世の中に俺より強い奴なんてそういない。紗奈は女なんだから危ないだろうが。何処にいる?とりあえず、明るいところを探せ。」

走りながら、スマホを繋げたまま紗奈の居場所を確認する。

『今…駅近くです。』

「何で反対にいるんだよ。近くに何がある?」

「〇〇スーパーが…。」

「分かった。そこまで行くから動くな。店の中に入ってろ。」