「クリスティーナ、おいで」

しばらく馬車に揺られていると、ふいに向かいの席からフィルが声をかけてきた。

え?とクリスティーナが首を傾げると、いいから、ほら、と手を引いて自分の隣に座らせる。

「必ず戻ろう、子ども達のところに。俺が必ず君を無事に連れて帰るから」

そう言うとフィルは、クリスティーナを強く胸に抱きしめる。
クリスティーナは、緊張の糸が切れたように涙を溢れさせた。

とめどなく涙を流すクリスティーナを抱きしめながら、フィルは優しくその髪をなでる。

フィルの胸に顔をうずめ、ただひたすら泣き続けるクリスティーナを、フィルは黙ったままずっと抱きしめていた。