その年の秋。
コルティア国王の即位10周年を祝う式典の日がやって来た。

国中がこの日を待ちわび、盛大なパレードをひと目見ようと、朝から大勢の国民が大通りに集まっている。

スナイデル王国からも、お祝いの品がたくさん届けられていた。

フィル達王太子一家も、パレードに参列する為に朝から支度を整えていた。

フィルはロイヤルブルーの軍服。
クリスティーナは国花のバラをイメージした深紅のドレス。

アレックスとマックスは、スーツにネクタイ。
フローリアは、真っ白なセーラーワンピースに赤いリボン。

それぞれ着替えを終えて髪型も整えると、大階段を下りて王宮のエントランスに向かう。

「まあ!なんて素敵なのかしら」

エントランスに見送りに来ていたリリアンが、頬に手をやってうっとりと五人に見惚れる。

「おおー、ほんとだ。輝かしいロイヤルファミリーだな。これは国民も総立ちで喜びそうだ」

アンドレアも目を細めて頷く。

「リリアン、俺達も早く子どもが欲しいね」
「あら、アンドレア様。しばらくは二人で新婚生活を楽しみたいっておっしゃってたのに?」
「ああ。リリーと俺の可愛い子どもに早く会いたくなったよ。ね?いいだろ?早く作ろう」
「アンドレア様ったら…」

クリスティーナは、んんっ!と咳払いをしてから、リリアンに声をかける。

「それじゃあ、リリアン。行ってくるわね」
「ええ。お気をつけてね」
「ありがとう」

フローリアも
「リリーおねえさま、いってきます」
と手を振る。

「行ってらっしゃい、可愛いプリンセス」

フローリアは、ふふっとリリアンに笑ってからフワリとスカートを翻して、クリスティーナと手を繋いだ。