「くっ、これはなんと!」

王宮の裏庭で、ハリスはフィルの繰り出す剣を受けて、顔を歪める。

「剣の動きもパワーも、全くの別次元ですな」
「ああ」

頷くと、フィルは太陽の剣を鞘に収めた。

「驚くほど扱いやすい。空を切るように軽く、しかもわずかな力でしっかりと衝撃を与えられる。俺はもう、これ以外の剣では戦えない」

そう言ってフィルは、ふっと笑みをこぼす。

「恐らくこの剣は、現代で作り出すことは不可能でしょう。素材からして違いますから」

ハリスの言葉にフィルも頷いた。

「そうだろうな」
「この剣も嬉しいでしょうね。やっと日の目を見ることができて」
「ははは!喜んでくれているといいな。ずっとダイニングルームに飾りとして掛けられていたそうだから」
「なんと!」

ハリスは驚いて目を見開く。

「このような名剣が、お飾りにされていたと?」
「仕方ない。誰も引き抜けなかったらしいからな。もはや言い伝えも信じられていなかったようだし」
「左様でございますか。王太子殿下が引き抜かれた時は、さぞかし驚かれたでしょうね」
「俺は気づかなかったけどね。なにせスルッと抜けたから、そんないわくつきの剣だなんて思いもしなかったし」

するとそこに「お父様!」とアレックスがやって来た。

「お父様、剣のけいこをお願いします」
「お、いいぞ。やるか、アレックス」
「はい!」

フィルは短めの剣に持ち替えて、アレックスと一戦交える。

「なかなかやるな。動きが随分良くなったぞ、アレックス」
「はい。オーウェン隊長に教えて頂きました」

二人で剣を交えていると、マックスとフローリアの手を引いてクリスティーナが様子を見に来た。

「わあ、おにいさま、じょうず!」

フローリアが目を輝かせて拍手する。

するとマックスが芝生の中から小枝を拾い上げ、「とぅ!とぅ!」と振り回し始めた。

「あはは!マックスったら」

フローリアが笑い、クリスティーナもふふっと微笑む。

「マックス、あなたも立派な騎士ね」

フィルとアレックスの頼もしい姿。
フローリアの可憐な笑顔。
そしてマックスのおちゃめな仕草。

(まるで幸せを絵に描いたようだわ)

そう思いながら、クリスティーナは目を細めて皆を見守っていた。