「おかあさま!」

王宮のエントランスに着くと、駆け寄って来たフローリアを、クリスティーナはしっかりと腕に抱き留めた。

「ただいま、フローリア。会いたかったわ」
「わたしもよ、おかあさま」

フローリアの可愛らしい頬にキスをして、心が幸せで満たされるのを感じながら、クリスティーナはギュッと胸に愛娘を抱きしめる。

「お父様、お母様、ご無事で何よりです」
「アレックス、留守を守ってくれてありがとう」

クリスティーナはアレックスを抱きしめ、最後にマックスをリリアンの腕から抱き上げた。

フィルも代わる代わる子ども達を抱きしめる。

「王太子様、お帰りなさいませ。お姉様、お帰りなさい」
「王太子様、アンジェ様、お帰りなさいませ」

「ただいま、リリアン、ロザリー。子ども達を見ていてくれてありがとう」

リリアンとロザリーにもハグをする。

「ヒヤヒヤしたぞ?フィル、アンジェ。二人とも無事で良かった」

アンドレアはフィルと固い握手を交わす。

すると、大階段を国王と王妃が下りて来るのが見えた。

「国王陛下、王妃陛下。ただいま戻りました」

クリスティーナとフィルが深々と頭を下げると、国王と王妃は立ち止まることなく近づいてきて、二人をギュッと抱きしめた。

「心配したぞ。良かった、本当に良かった」

感極まったような国王と、目に涙を浮かべた王妃。

フィルとクリスティーナも、グッと胸を詰まらせた。

「ご心配おかけしました」
「本当よ。どれだけ心配したか…」

王妃はクリスティーナを抱きしめながら、優しく頭をなでる。

「こんな軍服姿で変装までして…。きっと危ない目に遭ったのね?」
「はっ?いえ、あの…」

途端にクリスティーナの涙は引っ込む。
隣でフィルが小さくプッと吹き出した。

「さあ、とにかく中に入りなさい。まずはゆっくり身体を休めて」

国王に促され、ようやく皆は階段を上がった。