「あー、これこれ、この感じ!気持ちいいわ」

軍服姿で意気揚々と馬を駆るクリスティーナに、フィルは呆れてため息をつく。

結局フィルも隊員の馬を借りて、近衛隊第一部隊と一緒に一気にコルティアを目指すことになった。

「まったくもう…。追いはぎする王太子妃なんて、聞いたこともないぞ」
「ん?何か言った?」
「いいえ!何も!」

大声で言い返してから、フィルはふと気づく。

「クリスティーナ!まさか、あの隊員の前で着替えたのか?」
「え?そうだけど」
「そうだけど?!何を言ってるんだ!男の前で着替えるとか、な、な、なんてことを!」
「大丈夫よ。あっち向いててって言ったから。それに別に裸になった訳じゃないしね」

はだっ…!と、フィルは絶句する。

「クリスティーナ!帰ったら説教だからな!」
「あら、なぜ?」
「な、なぜって、当たり前だろ!何を言っている?!」

今にも説教を始めそうなフィルを、クリスティーナは速度を上げて振り切る。

「待て!クリス!」
「待たないわ。早く子ども達のところに帰りたいもの」
「その話じゃない!」

言い合いながら爆走する二人を、ハリスやオーウェン達はポカンとしながら追いかけていた。