静まり返った部屋で、クリスティーナはしばらく呆然としていた。

スナイデル国王の兄であるあの執事は、間もなくコルティア国に声明文を出すつもりなのだ。
そうすればどんな混乱が起きるのか、恐ろしくて想像すらしたくない。

(国王陛下も王妃陛下も、心配のあまり要求を受け入れざるを得なくなってしまうかも)

弟のスナイデル国王も、コルティア国王太子夫妻を幽閉していると言われれば、仕方なく王の座を兄に空け渡してしまうだろう。

(そうすればもう執事の思う壺。一気に諸外国にも戦を仕掛けられてしまうわ)

声明文を出される前になんとかしなければ。
でもどうすれば?

こんな時、いつもならフィルと一緒だった。
どんなピンチも二人で乗り越えてきた。

けれど今はフィルを頼れない。
初めて自分一人で戦わなければならないのだ。

クリスティーナは、挫けそうになる気持ちを必死で奮い立たせた。

(フィルの分まで私がなんとかしてみせる。そして必ず子ども達のところへ帰るのよ。フィルと一緒に)

そうだ、母親の自分がこんな弱気でどうする。
クリスティーナは顔を上げると、大きく息を吸い込んで決意を固めた。