(あそこに見える離れのような建物は、使用人達の部屋なのかしら。それなら、コルティアから一緒に来たお付きの人達もあそこに泊まっているのかも)

暇を持て余し、ひたすら窓の外を見ながらクリスティーナは思案する。

コルティアからここまでは、四人の付き人と共にやって来た。
到着してからは、スナイデルの侍女達にお世話になっている為、コルティアの付き人とは顔を合わせていない。

(なんとかして彼らに知らせられたらいいのに)

そう思いながら、頭の中で様々な作戦を立てる。

確かな時刻は分からないが、今はおそらく夜半過ぎ。

明日の午前中にはフィルとクリスティーナはここを発ち、コルティアに帰ることになっていた。

朝から二人の姿が見えなければ、何かがおかしいと気づいてもらえるだろう。

コルティアを出発した時から、クリスティーナは左足の太ももに短剣をベルトで留めて忍ばせていた。
いざとなればその短剣で戦える。

問題は、このドレスだ。
舞踏会の時に着ていたドレス姿のままだったのだが、これではさすがに動きづらい。

(ケイティに着替えを頼む?いや、最初はあまり下手に動かず、様子を見た方がいいわね。失意の中にいる王太子妃って芝居をした方がいいわ)

クリスティーナはわざと肩を落とし、途方に暮れている王太子妃を演じていた。