「クリスティーナ。君がこんなにダンスが上手いなんて思わなかったよ」

フィルの言葉に、クリスティーナは首を傾げる。

「あら、どうして?」
「だって君は筋金入りの不器用で、女の子らしいことは全部苦手じゃないか。料理も刺繍もからっきしだし、読書もしなけりゃ勉強だって…」
「フィル?かかとで足を踏んづけて差し上げましょうか?」

ヒエッ!とフィルは首をすくめた。

クリスティーナはピタリとフィルに寄り添ったまま、華麗なステップでドレスを美しく揺らす。

「身体を動かすのは得意なのよ。乗馬や剣術と同じで」
「なるほどね。でも初めて君の女性らしさを垣間見たよ」
「ちょっと!さっきからもう…。褒めてるの?けなしてるの?」
「恋に落ちてるんだよ。改めて君にね」
「は?!もう、バカ!」

真っ赤になったクリスティーナは、恥ずかしさに思わずフィルの胸に頬を寄せる。

周りからより一層、うっとりとしたため息が聞こえてきた。

「ティーナ。俺の可愛いプリンセス」

耳元でフィルがささやき、クリスティーナは顔から火が出そうになる。

「ちょっと…。絶対面白がってるわよね?フィル」
「んー?違うよ。愛してるんだよ」
「何言ってるのよ、まったく」
「だって可愛いドレスを着たティーナがこんなに俺にくっついて、優雅に踊ってくれるなんてさ。俺、今夜はティーナに惚れ直したよ。心から君を愛してる」

真っ直ぐに告げられる言葉に、クリスティーナは何も言えずにうつむく。

「どうしたの?ティーナ」
「ど、どうしたって、その…。恥ずかしくて」
「なにが?」
「だから、フィルが、そんなこと言うから」

消え入りそうな声でそう言うと、フィルは嬉しそうに笑う。

「照れちゃって可愛いね。今夜のティーナは愛しくてたまらない。もうずっと俺の腕の中に閉じ込めておこう」

フィルは身を屈めてクリスティーナにささやき、優しく頬にキスをする。

「大好きだよ、ティーナ」

クリスティーナはもはや顔を上げられずに、ひたすらフィルの胸に額をくっつけていた。