「コルティア国王太子、フィリックス=アーサー殿下と、王太子妃、クリスティーナ=アンジェ妃殿下にあらせられます」

夜になり、着飾った紳士淑女が集まる中、フィルとクリスティーナは腕を組んでにこやかに大広間に足を踏み入れた。

「まあ、なんて麗しいお二人ですこと」

うっとりとした感嘆のため息の中、二人は優雅にお辞儀をする。

早速グラスが配られ、皆で乾杯すると、軽やかに音楽が奏でられ始めた。

「王太子様、クリスティーナ様。どうかお二人のダンスをご披露くださいませ」

年配の婦人に前のめりに話しかけられ、フィルとクリスティーナは少し苦笑いしてからグラスを置いた。

「いいの?クリスティーナ。お腹が減って動けないんじゃない?」
「ちょうどいい準備運動だわ。あとでお腹がはち切れるまで食べるから」
「うわー、目が本気だな」
「当然よ」

小声でやり取りしながら、フィルはクリスティーナの手を取って、中央にエスコートした。

向かい合ってお辞儀をすると、周りの人達が二人に場所を譲って注目する。

フィルはクリスティーナのウエストをグッと抱き寄せ、軽快なワルツに合わせてステップを踏み始めた。

クリスティーナも微笑みながらフィルを見つめ、軽やかに息の合ったワルツを踊る。

クリスティーナのブルーのドレスがフワリと揺れて、皆はうっとりとその美しさに見とれていた。