「恋って何がそんなに楽しいんですか?」
いつものカフェで、志穂さんに尋ねる。
岡本志穂さんは、このカフェでバイトをしている大学生で、私の話し相手になってくれている。
「うーん、楽しいっていうか、好きな人のことを考えたり、話せたりするのが嬉しかったりするんじゃないかな」
「よくわかんない」
「鈴ちゃんはまだ高校生でしょ?じゃあこれからわかるんじゃない?」
「志穂さんは恋をしたことあるんですか?」
「えっ私?一応…」
少し顔を赤くして志穂さんが答えた。
「へー、どんな人ですか?」
「とっても優しくて、いい人だよ」
そこまで話した時、志穂さんは他のお客さんの接客に行ってしまった。

「じゃあ気をつけて帰ってね」
閉店時間まで店に居座っていた私は、志穂さんに見送られて、家に帰った。