秋文さんは、「誰が離すかよ。 お前みたいな疫病神、守れんのは俺だけしかいねえだろ」と、私をぐっと抱き寄せた。

「疫病神じゃないのに……」

 ボソッと言ったのに、秋文さんは「俺だけの前では、疫病神でいいんだよ。……じゃないとお前のこと守れないしな」と微笑んだ。

「……確かに、守ってもらえないのは困る」

「だろ? だからずっと、俺だけの疫病神でいろ」

 そんなことを言われたら、疫病神でも悪くないと思ってしまった。
 だって私の彼氏は、警察官だから。 私の命をいつも守ってくれる、優しい彼氏だから。

 だから私はこれからも、秋文さんとの人生を歩んでいくことに決めた。
 この指輪に込められた愛が、それを物語っている。離れることは決して、許されない。

「いいの?疫病神で? お祓いしてこようか?」

 なんて冗談交じりに伝えると、秋文さんは「疫病神でもいいけど、気になるならお祓いしてきてもいいぜ」と私に言った。

「やっぱりやめた!」

「は?なんだよ」

「だってお祓いしちゃったら、守ってもらえなくなるもん」
 
 秋文さんは「ほう。そうかそうか」と笑うと、そっとキスをした。

「澪奈?」

「……ずるい」

「はっ? ずるいってなんだよ」

 秋文さん、秋文さんと出会えて良かった。あなたを好きになって良かった。
 あなたの前でなら、疫病神も悪くないね。


【THE END】