「秋文さんって、無愛想だと思ってたけど、本当はちゃんと優しい人なんだよね」

 私がそう言うとと、秋文さんは「は?ちゃんとって、なんだよ」と私を見る。

「だってなんか、初めて会った時無愛想で怖かったから」

「無愛想? 俺がか?」

 まるでそんなことない、と言うような顔で私を見ている。

「そうだよ。無愛想だった」
 
「そんなことないと思うけどな」
 
「え?本気で言ってるの?」

 自分ではあれが普通だってこと? まるで自覚がないってこと……?
 恐ろしいよ、この人は。

「私のこと、お前って言ってたよ」

「そうだっけ?」

「そうだよ。覚えてないの?」

 私はこんなにも覚えてるのに、ひどくない?

「少なくとも、言った記憶はないな」

「……最低」

 秋文さん、本当に無愛想だよ。

「私、お前って言われて、あの時結構ショックだったんだよ」

「そうか? 全然覚えてないわ」

「ひどいっ!」 

 私、絶対に忘れてないのに。

「まあまあ、そんな怒るなよ。 今はちゃんと好きだから、澪奈のこと」

「……もう。都合いいんだから」 

 私がそう言うと、秋文さんは「澪奈、俺のこと嫌いになった?」と聞いてくる。

「なってないよ、嫌いになんて」

「そうか」

「でもちょっと傷付いた」

 秋文さんはそんな私に、「悪かったよ、澪奈」と頭を撫でる。