「ケガはねえみたいだな」

「はい。……ありがとうございました」

 私がお礼を言うと、刑事さんは「なあ、この後時間あるか?」と私に聞いてくる。

「……え?」

 刑事さんから「ちょっとコーヒーが飲みたい。 助けたお礼に奢れ」と言われた私は、「えっ!?」と驚いてしまった。

「た、助けたお礼……!?」

 あ、あなた刑事ですよね!?

「あのな、俺は今日非番なんだよ。仕事じゃねえのにお前を助けてやったんだ。 お礼くらいしろ」

「え……!? あ、ちょっと!?」

 スタスタと歩かれ、私は慌てて彼の背中を追いかける。

「ちょっと待ってください」

「なんだ」

 私は隣に並び、彼に「奢ります。奢りますけど……私、まず行きたいお店があるので、そっちに行ってもいいですか?」と問いかけた。

「ああ、分かった。 早く行ってこい」

「またナンパされるとイヤなので、近くにいてくださいね」

「はあ?……ったく。わーったよ」

「すぐ行ってきます」 

「早くしろよ」

 刑事さんは嫌そうな顔をしていたけど、なんだかんだお店の入口で待っててくれた。
 
「お待たせしました」

「おう。じゃあ行くか」

「はい」

 なんかこうして隣に並ぶと、変な感じがする。
 今日の刑事さんはスーツじゃなくて、私服だし。パーカーにチノパンというカジュアルな格好だ。