「澪奈?知り合い?」

 結香にそう聞かれて、私は「あ、ひったくりに遭った時に犯人を捕まえてくれた刑事さん」と刑事さんを紹介した。

「あ、そうなんだ。 あの時は澪奈がお世話になりました」

「ああ。……ほら、さっさと帰れ。捜査の邪魔だ」

「はい。お邪魔しました」

 私たちは刑事さんたちから離れるように歩き出した。

「澪奈?あの刑事さん、かっこよくない?」

 結香はニヤニヤして私に言ったのだった。

「え? そう?」

「そうよ!」

「そうかな」

 確かにこれで偶然にしては、何回も会いすぎている。 もう何回目だろうか。

「もしかしたらさ、偶然じゃないかもね」

 結香は嬉しそうに私に言った。

「え? 偶然じゃないって……?」

「ほら、これは多分運命だよ」

「運命……?」

 確かに何回も会うなんて、不思議ではあるけど。

「あの刑事さんと澪奈って、運命なんじゃない?」

 私はそう言われて「何言ってるの? そんなことないよ」と言葉を返したけど、その運命という言葉が妙に引っかかった。

「いや、ここまで偶然が続くと、もはや運命でしょ」

「運命……ね」

 運命なんて、本当にあるのだろうか。 もちろん、私は運命なんて信じてる訳じゃない。

「いいと思うけどな、あの刑事さん」

「え? どこが?」

 あの人は、ただの刑事だよ。