正直に言うと、不安な気持ちはある。でも……。

「不安になるのは、当たり前だ。殺人事件を目撃したり、ひったくりに遭ったりしたんだ。……不安になって、当然だ」

「……刑事さん」

「でも、そのために警察がいる。 だから、安心しろ。俺たち警察は、市民の味方だ。市民の安全を守るのが、俺たち警察の役目だ」

 私に向けられたその真っ直ぐな瞳と言葉が、私の何かを動かした気がした。

「はい。私、刑事さんなら信用出来ます」

「そうか。俺の仲間は、皆優秀だ。必ず犯人を捕まえる。 だから、待ってろ」

「……はい」

 無愛想な人だと思ってた。でも……本当はすごく優しい人なんだと分かって、ホッとした。

「家の鍵はあるか?」

「カバンの中ですが……。でも予備の鍵はあるので、大丈夫です」

「分かった。これから部下に家まで送らせる。 犯人捕まるまで、家で大人しく待っとけ」

 そう言われた私は、「分かりました」と答えた。

「ありがとうございました」

「こちらから、また追って連絡します」

「はい。よろしくお願いします」

 そのまま自宅まで送ってもらった私は、家で待機することにした。
 
 にしても、殺人事件を目撃したかと思えば、さらにはひったくり……。最近の私は、とことんツイてない。
 最近まで好きな人がいたけど、その人には婚約者もいたことが分かったし。