「じゃ、『うたエモン』に7時です!
忘れないでくださいねっ」

意気込んで言う朋美に辟易しながらも、俺は適当にうなずき返す。

横で黙って見ていた小泉さんが、朋美がレジに戻って行く背中を見つめ、冷めた口調で言った。

「あの子、桜井くんに気があるよね、絶対。
高橋には友達だって言ってたらしいけど、あたしと仲村ちゃんは、疑ってるんだ。
そのうち「付き合って」とか、言われるかもねー」

最後は厭味(いやみ)な言い方をして、小泉さんは台車を引きながら俺を肩ごしに振り返りつつ、バックヤードに消えて行った。

その背中に、勘弁してくださいよー、と、苦笑いを返す。

まさか、小泉さんの予言が、的中するとも思わずに。