「そりゃ……寂しくなりますね。
でも、考えようによっちゃ、こんなトコ勤めているよか、いいんじゃないっスか?」

他に言いようがなく、俺はちょっと笑った。

俺の反応に小泉さんは、確かにね、と、うなずく。

「お給料の額はもちろんだけど、待遇面とか、ここよりかなり良いみたいなこと言ってたけどさ。
……まぁ、なんにせよ、早いとこ幸せになってもらいたいもんだよ」

姐御肌の小泉さんらしい物言い。
ふたりして、8台ほど並んだレジの方を見やった。

静は暇を持て余したように、レジ台の上を()いていた。

栗色の束ねられた髪からのぞく耳たぶには、金色の小さなピアスが光っている。

……俺と別れたあとに空けられたそれは、俺との悪縁を断ち切るためのもののように、思えた。