静は、俺との仲を終わりにするつもりで、友達とのことを口実に、俺と会ったのだと。

彼女らしからぬワガママな言動が、急に嘘くさいものに思えてくる。

朝方の冷えた空気を吸い込むと、胸の奥で、何かがくすぶっていた。

急にせつなさがこみあげてきて、そんな自分を抑えつけるように、のどをきゅっとしめつける。

───振り返らない背中を、振り向かせたい衝動にかられていた。

だけど俺は、静を追いかけはしなかった。

追いかければ、また同じことの繰り返しだと分かっていたからだ。