不審な静の態度に、あわてて車から降りた。

「静」

俺の再度の呼びかけに振り返らず、静は自分の家の方へ向かい、歩いていた。

朝焼けのなか、迷いのない足取りで。

毅然(きぜん)とした後ろ姿は、もう、俺の存在など忘れてしまったかのようだった。

女らしい丸みのある体の線を、わずかな朝の日の光が、照らす。

無言の背中。
俺は、ようやく気がついた。