「…美久、ごめん。ごめんなさい。すみませんでした」
「梓…」
未だに保健室に通っている私。
そんな私の元に、梓がやってきて…謝罪の言葉を口にした。
「山寺梓。お前、謝罪の3段活用するな。軽いぞ」
「……すみませんでした」
保健室の郡司先生は睨むように梓を見る。
当の私は…どう答えれば良いのか分からなかった。
「…内山、すぐに許す必要は無いと思う。教室に通えず、ここに来ているのが理由の全てだ。…ゆっくり、元に戻れると良い。俺は、そう思うよ」
「………そうですね」
梓は体を震わせ、涙を零し始めた。
そして…その場に土下座をする。
「本当にごめんなさい。私こそ、すぐに許してもらえるとは思っていない。…だから、また。ここに謝りに来ます」
「……梓…」
「すみませんでした」
そう言って立ち上がり、梓は保健室から出て行った。
「まぁ、時間は掛かると思う。でも、大丈夫。内山が教室に戻れるまで…俺が心からのサポートをするから…」
なんて言いながら私の頭に手を伸ばしてくる郡司先生。
そしてまた、タイミング良く開いた保健室の扉…。
「………は? 郡司先生?」
「…おぉ、これは…向井」
触れる寸前で止められた郡司先生の手。
その手を向井先輩は酷く握って振り下ろす。
「向井は凄いなぁ、俺の行動が読める?」
「殴りますよ」
「おぉ、生徒会長さん怖い」
そう言う郡司先生を無視して、先輩は私を優しく抱きしめた。
「美久ちゃん、山寺梓に何もされなかった? 大丈夫だった?」
「…はい。謝罪されただけです」
「……そっか」
腕に力が入る…。
そんな先輩を、私も抱きしめ返す。
あの全校集会以降、向井先輩に近付く女子は大幅に減ったらしい。
キラキラ、ニコニコと自分を作って無理をする必要も無くなり、学校生活が気楽になったと先輩は笑っていた。
…良かった。
私に取って、それが何よりだよ。
「お~い、お前ら。俺がいるけど?」
「……」
「無視すんな~」
……先輩の体温に、安心感を覚える。
全身で感じる、向井先輩の全てに。
心からの幸せを、初めて感じた。
先輩の心、私でも晴らせますか…? 終