また、雨が降った。

今朝の天気予報では、今日雨が降る予報になっていなかったのに。


「……」


そう思いながらも、体は自然と教室棟に向かう。



雨が降るとあの場所に行くということが、もう癖になっているのかもしれない。



「……先輩」
「あ、美久ちゃん…」



いつも通り、3年の教室前に居た向井先輩。

私の姿を見つけると、走って私の元に駆け寄ってきて…優しく抱きしめられた。


「……先輩?」
「美久ちゃん、会いたかった」


そんな先輩の言葉に、小さく頷く。


今日の先輩は、いつも以上に退屈そうな…気だるそうな…悲しそうな…そんな、何とも言えない表情をしていた。


「先輩、無理していませんか」
「……無理は、していないよ」


そう言う先輩の顔を覗き込む。
目が少しだけ潤み、今にも泣きそうだ……。


鼻をすすり、何も言わない先輩。



「……」



いつも心で思うだけ思って、それを言葉にできない私だけど。


今日は……思ったことを、きちんと言葉にできた。



「…先輩」
「……ん?」
「先輩の心、どうすれば…晴らせますか」


私の言葉に驚いた表情をした先輩。



……言えた。
ずっと…思っていたこと。



「え?」
「…先輩の本音を聞いた日から…ずっと、そんなことを考えています」
「……」
「私、先輩のキラキラした姿よりも、退屈そうで、気だるそうで、悲しそうな姿の方が…気になります」