三年後。
 あの後、国を三つほど超えた場所にある山間の辺境の村にたどり着き、家を建てて暮らし始めたミリエルとユアンは、平穏な日々を送っていた。
 村の住民は優しく、駆け落ちしてきたのだね、と言ってミリエルたちを受け入れてくれた。
 聞けば、ここはそういう家族に結婚を認められなかった恋人たちが逃げ伸びて集い、うまれた村なのだという。
 聖女や竜の信仰からほど遠いこの村での暮らしは穏やかで、波や風と言えば、時折、旅の商人から「アトルリエ聖竜国」の話を聞くことがあるくらいだった。
 アトルリエ聖竜国は聖女の失脚と同時に、彼女それまでの不正や素行の悪さが明るみになり、国の根幹をなしていた教会への信仰をほとんど失ってしまったらしい。
 求心力を失った国の内部はぼろぼろで、頼みの聖女は赤ん坊状態。
 その混乱を狙って、アトルリエ聖竜国は他国から領土を狙われている。