月の光る夜、星が空から降ってくる。
今日は流星群の日だった。
静かな聖堂の裏にある小さな花壇。空を見上げて、手入れされていないためにパサついた銀の髪を風に揺らし、空色の目を伏せたまま、ミリエルは囁くように言った。
「あなたを愛してるわ、ユアン」
初めて口にした愛の言葉は、涙に濡れた、自分に自信のないものになった。
幼馴染のユアンがその炎のように赤い目を丸くし、驚いたような表情でミリエルを──聖女の姉、ではなくて「わたし」を見ている。
ユアンの、肩口で結わえた黒く長い、つややかな髪がさらりと背に流れた。
騎士らしく鍛えられた彼は、視線までも鋭い。ユアンは食い入るように「わたし」を見つめ、ミリー、と彼だけが口にするミリエルの愛称を呼んだ。
一歩近づかれ、急に詰められた距離にどぎまぎする。
10年前、双子の妹がこの国の、宗教上の最高権威であり、教会の象徴でもある聖女として選ばれた日から、ミリエルは妹のセレナにすべてを奪われてきた。
両親の愛も、期待も、ミリエル・クリスト・フララットとしての生活も。
ミリエルのすべては聖女である妹のために存在し、そこに反感をもつことなど許されなかった。
今日は流星群の日だった。
静かな聖堂の裏にある小さな花壇。空を見上げて、手入れされていないためにパサついた銀の髪を風に揺らし、空色の目を伏せたまま、ミリエルは囁くように言った。
「あなたを愛してるわ、ユアン」
初めて口にした愛の言葉は、涙に濡れた、自分に自信のないものになった。
幼馴染のユアンがその炎のように赤い目を丸くし、驚いたような表情でミリエルを──聖女の姉、ではなくて「わたし」を見ている。
ユアンの、肩口で結わえた黒く長い、つややかな髪がさらりと背に流れた。
騎士らしく鍛えられた彼は、視線までも鋭い。ユアンは食い入るように「わたし」を見つめ、ミリー、と彼だけが口にするミリエルの愛称を呼んだ。
一歩近づかれ、急に詰められた距離にどぎまぎする。
10年前、双子の妹がこの国の、宗教上の最高権威であり、教会の象徴でもある聖女として選ばれた日から、ミリエルは妹のセレナにすべてを奪われてきた。
両親の愛も、期待も、ミリエル・クリスト・フララットとしての生活も。
ミリエルのすべては聖女である妹のために存在し、そこに反感をもつことなど許されなかった。