「火のない所に煙は立たぬって言うだろ。言い訳をするなよ」

 必死に言い返す美璃だったが、冬治は冷たい視線を変えなかった。

 刺すような口調で言ってくる。

「だ、大体、どうして冬治が知ってるの!?」

 強い視線に逃げたくなるのをなんとか堪えながら、美璃は言い返した。

 だってこれはおかしい。

 冬治は前述のようにモデルで、美璃が務めるこの【マネリー】とはなんの関係もない。

 なのに、たった三日で、しかも自分が話しもしていないのに、どうして。

 その疑問に回答したのは、冬治ではなかった。

「ごめんねぇ、佐上さん。私が話したの」

 不意に後ろから、こつこつとヒールの靴音が響いた。

 美璃が、ばっと振り返ると、見知った顔の女性が近付いてくるところだ。

下野(しもの)さん……!?」

 セミロングの茶髪を強めに巻いて、濃いめのメイクを施した彼女・下野 麻耶(まや)は美璃の同僚だ。

 同期の女の子の麻耶だが、ひとつほかの社員と違う点を持っている。

 それは、【マネリー】会社役員の娘という立場だ。

 この状況と麻耶の言い方だけで、美璃は察してしまった。

 つまりこれは……。