『佐上さんの担当だったはずの部分だよね?』

『このスケジュール管理が狂ったせいで、顧客を逃したんだけど』

『これはミスとしては大きすぎるよ。減給対象として上に報告する』

 まったく身に覚えのないことを上司から強い口調で言われて、美璃は愕然とした。

 確かに勤めるこの会社……衣料関係の取引を扱う【株式会社 マネリー】では、最近、大口顧客を逃したという話が持ち上がっていた。

 しかしそれが自分のせいだと言われるとは思ってもみなかった。

『なにかの間違いです! これは私の管理していた部分じゃな……、……!』

 必死で言い募ったが、上司が差し出した書類を目にして、目を見開いた。

 そこには確かに、美璃の名前とサインがあったのだから。

『言い訳は上の者と一緒に聞こう』

 上司にきっぱり言われてしまい、美璃は反論も失った。

 あとはなにを言っても無駄だった。

 覚えのないミスは美璃のものと確定されてしまって、懲罰の会議にかけられると宣言されたのだから。