「お疲れ様、美璃」

 会場を出て、しばらく歩き、颯士が立ち止まったのは廊下突き当たりの、バルコニー近くだった。

 美璃を振り向き、にこっと笑ってくる。

「う、ううん……あの……」

 でも美璃は戸惑いの声を出すしかない。

 悪事がすべて明るみに出て、これできっと自分にかかった疑惑も払拭されるのだろうけれど、今は喜ぶよりも、いきなり知ってしまった驚きが強い。

「ごめん、驚かせたよな」

 美璃の心境はわかっている、とばかりに颯士は苦笑の表情になる。

 まったく悪くないのに、謝ってくれた。

「だけど、いい機会だと思ったんだ」

 しかし次にはそう続いた。

 美璃はなにか言おうと思ったのを、引っ込める。

「美璃が陥れられたままになるなんて、許せなかった。俺の大切な身内で、妹のような存在なのに」

 硬い口調で言った颯士に、美璃は息を呑む。

 今日のことは、すべて事前に計画していたのだろう。

 そして今日、この『いい機会』に、すべてを明らかにしてくれた……。