「書類偽装は立派な犯罪だ。こちらは【マネリー】に提出済みだから、美璃への疑惑と同時に、検証してもらえることだろう」

 静かな声で、通告した颯士。

 その場は完全に沈黙になった。

(提出済み……つまり、私の処分が延期になってたのは、これを検討していたから……?)

 ぼんやりと頭に浮かぶ。

 信じられない、と思いつつも、事情はすべて筋が通っていたし、理解できた。

 無になったその場で、冬治と麻耶は言葉を失っていたが、やがて周囲からは小さく声が聞こえてきた。

 もちろん、二人の悪事が明るみに出たことへの驚きの声だ。

「さ、用は済んだな。美璃、そろそろ行こうか」

 颯士がふと、美璃に視線を向けた。

 見下ろす位置になる美璃を見て、ふっと微笑む。

 その表情に、美璃はやっと、はっとした。

 ここまでの展開に押し流されるようだったが、すべての真実が明かされたのだ。

 そして、すべて解決するのだろうということも、理解した。

「行こう」

 もう一度、颯士が言ってくれる。

 手を差し出した。

 美璃は戸惑いながらも、手を伸ばし、その手を取る。

「では、またね」

 颯士は最後に冬治を一瞥だけして、挨拶した。

 そのまま二人でその場を後にする。

 場を離れて、扉を出る頃には、会場内には戸惑いのざわめきがはっきり発生しつつあった。