『麻耶、本当に上手くやったよな』

 まず聞こえてきたのは、冬治の声だった。

 褒める言葉ながらも、歪んだ声で、まるで悪巧みが成功した子どものような声音だ。

『まぁね~! 佐上さんのサインなんて、ほかの書類で拾ってこられたしね。それをちょちょっと細工すれば、簡単だったよ』

 続いたのは麻耶の声だった。

 こちらは得意げだ。

 ふふん、と鼻で笑いたいような響きを持っている。

 そのあとも同じ調子のやり取りが続いた。

『【マネリー】で新モデルの仕事をもらえたら、俺もさらなる躍進が見込めるしな。美璃よりずっと美人なお前と付き合えること自体も嬉しいし』

『もー、仕事の話を先に出さないでよ! 嬉しいけどさ~』