なんと答えていいのか、すぐにはわからなかった。

 だって、そういうことなら、颯士は冬治にとって、相当な『上のひと』という立場になるわけで……。

 颯士と連れ立って、会場に入ったときの視線も、これが理由だったのだろう。

 冬治の会社の関係者、しかもお偉いさんだったのだから。

 この場の全員が驚愕する中で、一人だけ微笑を浮かべていた颯士が、再び静かに言った。

「中原くんは、俺の彼女を陥れたそうだね」

 視線を向けられて、冬治はびくりと震える。

 顔だけではなく、体全体が強張るのが見えた。

「え、な、なにを……」

 カチコチになった声でなにか言いかけたが、そこでスッと颯士がなにかを差し出した。

 その手にはスマホが握られている。

 颯士が指でひとつボタンをタップすると、スマホからは、明瞭な音声が流れだした。