その美璃を見て、冬治は少し眉根を寄せた。

 面白くないな、という表情だったように、美璃の目には映る。

 どうやら美璃が傷ついたり、怒ったりする様子を見せるのを期待していたようだ、と察せた。

 そうして、察してしまえば、呆れた。

 マウントを取るために呼んでおいて、思い通りにならなかったらこんな顔をするなんて、と思ってしまう。

「……佐上さん。その方はなによ」

 しかし隣の麻耶は少し違う態度だった。

 やや警戒するような、不快そうな、硬い言い方で聞いてくる。

 表情も歪みそうになっていた。

「あ、こちらは……」

 美璃はそこで、『自分の連れ』という名目なのだから、先に紹介するべきだったことにやっと思い当たる。

 無礼だった、と慌てて手を差し出しかけたのだけど、颯士が一歩前に踏み出すのが先だった。

「どうも。美璃とお付き合いさせていただいている、百野 颯士です」

 颯士の名乗りは丁寧だった。

 おまけに表情も微笑だった。

 なのに、冬治の顔に浮かんだのは、明らかな驚愕だった。

「百野さんって……まさか【トリリヴォン】統括マネージャーの……!?」

 発した声も同じで、驚愕の響きだ。

 美璃は不審に思ってしまう。