「お待たせいたしました。これより中原家と下野家による、婚約パーティーを開催いたします」

 やがて定刻になった。

 司会がアナウンスし、照明が落とされる。
 
 静かになった会場内で、入り口扉がおもむろに開いた。

 華やかな音楽が流れ、再び照明が、ぱっとついた。

 そこから入場してきたのは、もちろん冬治と麻耶である。

 冬治はセミフォーマルのタキシードを、麻耶は華やかな赤いドレスを身に着けて、しっかり腕を組んでいた。

 しかしその姿を見ても、美璃の胸は落ち着いていた。

 そりゃあ、祝いたいとは思えない。

 でも嫌悪もない。

 もう自分とは関係なくなったことだから、とどこか他人事のような気持ちで思う。

 だから拍手をする手は自然に動いたし、微笑すら浮かんだくらいだ。

 冬治と麻耶はゆっくりと会場内へ進み、やがて美璃の近くまで来たのだが……。

「……っ!?」

 美璃と視線が合った麻耶は、明らかに息を呑んだ。

 目を見張り、驚愕した、という表情になる。