そこへ給仕役のスタッフが近付いてきた。

「お飲み物をお伺いいたします」

 颯士はその質問に答えるより先に、美璃を見た。

「なににしようか? 俺はノンアルコールのシャンパンにしようと思うけど、お酒を飲む?」

 丁寧に確認してくれる颯士に、美璃は嬉しくなってしまう。

「ううん、私も同じでお願いします」

 だからそのまま答えた。

 美璃の返事に、颯士は笑みで頷いて、スタッフへ注文を告げる。

「わかった。では、ノンアルコールシャンパンを二つ」

 飲み物はそう待つこともなく、来た。

 その間にもお客はどんどん集まってきていて、それぞれ好きなテーブルに着いて、歓談を始めている。

 だけどやはり入場のときと同じで、颯士のほうにちらちら視線が向いているようなのを、美璃は察した。

(本当になんだろうな?)

 不思議に思うも、まさか颯士に聞いてみるわけにもいかない。

 ただ、もらった飲み物を少しずつ飲みながら、颯士となんでもない話をしているしかなかった。