「お待たせ、美璃」

 考えるうちに、颯士が戻ってきた。

 声を掛けられて美璃が振り向くと、例の素敵なフォーマルスーツと、黒のローファーという姿で颯士が近付いてくるところだ。

「颯士さん。お車、ありがとう」

 ほっとして、そちらへ向かっていた。

 颯士も微笑で美璃に答える。

「いいや。少し支度をしようか?」

 軽く答えたあと、颯士がそう提案した。

 確かにまだ開場まで二十分ほどある。

 手洗いを済ませたり、軽くメイクを見直してもいいだろう。

「うん」

 素直に頷いて受け入れて、二人はそれぞれ支度へ向かう。
 
 パウダールームでメイクを見直す間、改めてどきどきしてきた。
 
 パーティーというだけでも緊張するのに、これから冬治と麻耶に対峙するときている。

 今の自分なら適切に振る舞えると確信しつつも、どうしても緊張は消えてくれなかった。