「ありがとう。颯士さんが選んでくれたから……」

 はにかみながら、謙遜混じりのお礼を言った。

 なのに颯士はさらっと首を振るのだ。

「いや、着こなしてるのは美璃だよ。本当に美しい」

 美璃がもっと照れてしまっても仕方がないだろう。

 でも褒められるばかりなのはいけない。

 信号が変わり、再発進した車の中で、美璃はおずおずと口を開いた。

「その、颯士さんもとっても素敵です」

 今度は違う意味で照れてしまう。

 そう、颯士ももちろんドレスアップした姿なのだ。

 髪は前髪を持ち上げてセットしてあり、凛々しい印象。

 スーツはダークグレーのセミフォーマルのものだ。

 紺色のネクタイを締めていて、胸元には白いポケットチーフがあった。

 運転しているのでここからは見えないが、靴も上等なローファーなのだろうな、と推察できた。