「いや、構わないけど……。こんなに泣いて、どうしたんだ?」

 颯士はもちろん、ドアを開けるなり美璃にしがみつかれて、大いに驚いたようだった。

 でもすぐに説明できない。

 一言で済むような話でもないのだし。

 心配そうな目で美璃を見下ろし、見つめてくる颯士と視線が合って、顔が一気に熱くなる。

 なんてみっともない姿を見せてしまったのか。

 赤い顔で口をぱくぱくさせるしかなくなった美璃。

 そこへ奥からぱたぱたとスリッパの音がした。

「まぁまぁ、美璃? どうしたのよ」

 奥から顔を見せたのは、美璃と同じ焦げ茶色の髪を後ろで綺麗に編んだ姉・美香(みか)だ。

 美香も心配そうに聞いてくれて、こちらへ来たけれど……。

(最初からお姉ちゃんが出てよー! 恥ずかしいことしちゃったじゃない!)

 責任転嫁を胸の中で絶叫する。

 あまりの恥ずかしさに、顔のひとつも覆いたいくらいだった。