「こんにちは。今日は彼女のドレスを見立てていただこうかと思いまして」

 颯士のほうは、店員の対応にももちろん動じず、さらっと言った。

 しかし態度よりも、言われた内容のほうが美璃にとっては重要だった。

(ドレス!?)

 目を見開いて颯士を見上げてしまったのだけど、颯士はその美璃に自然な笑みを向けてきた。

「だってパーティーなんだろう。ドレスは必要じゃないか」

 そう説明されれば、確かにそうだ。

 でも美璃は、そう、普段結婚式に参列するとき用に持っているパーティードレスでじゅうぶんだと思っていたのだ。

 まさかそのために買いに来るとは思わなかったし、それもこんな高級店だなんて思わなかった。

「え、で、でも……まだ二週間後なんだし……」

 おろおろ言ったのに、それすら颯士には一蹴されてしまった。

「サイズを調整してもらうセミオーダーだから、そのくらいかかるよ。早く選んだほうがいいんだ」

 え、えー……!?

 美璃はもう、心の中で絶叫するしかない。

 まったく、いきなり違う世界に飛び込んでしまったようなものだ。

 なのに美璃の動揺に構わず、颯士は奥に陳列されているドレスのほうへ向かってしまう。

 美璃もおろおろとついていった。