「え……!? ここ、です……か!?」

 到着した街で、案内されたのは、洋服屋。

 いや、この店構えなら『ブティック』だ。

 前に立っただけで、美璃はぽかんと立ち尽くしてしまった。

 着いたエリアが銀座……美璃にとっては『お金持ちの街』……だったことにすでに戸惑っていたのに、その中でも明らかに高級店とわかるお店ではないか。

「ああ。俺がよく来ている店だから心配ないよ。入ろう」

 なのに颯士はさらっと言い、美璃を促す。

 こんな、仕事帰りのオフィスカジュアルなんて格好で入っていいのかな。

 美璃は戸惑いながらも、一歩踏み出した。

 しかし、直後、どきんっと心臓が跳ねてしまう。

 すっと颯士の手が美璃の肩に回ったのだから。

 軽く肩を抱くようにしてくれる。

 優しく、肩を包み込むその手つきは、昨日、美璃が姉と誤解して抱きついたときに触れてくれたときと、まったく同じ優しさを持っていた。

 美璃の胸の鼓動が一気に速くなってしまう。