「でも、いいんです。断ったら逃げるみたいになりますから! せいぜい美味しいものでも食べてきますよ!」

 だから美璃はもうひとつ、強がるように高い声を出し、今度は颯士を見た。

 笑いかけようとする。

 でももちろん、泣き笑いのような表情になってしまった。

 美璃の表情に、颯士は眉を寄せる。

 向こうも辛そうな表情を浮かべた。

 やがて視線を逸らしたのは颯士だった。

 封筒を片手に持ったまま、逆の手を口元へやり、なにか考えるような顔になる。

 なんだろう、と美璃は思った。

 そして数秒後に出てきた提案は、美璃にとって、意外すぎるものだった。

「俺がついていこうか」

「……え?」

 静かに言われた言葉に、美璃は変な声を出してしまった。

 表情も困惑になっただろう。

 颯士はその美璃に視線を向ける。

 硬い表情で、続けた。

「俺が彼氏役として、同伴したらどうだろう。そうしたら、少しは辛くないんじゃないかな?」