「そう……ですよね。そうだと思います」

 だから自分でも肯定する。

 声が震えそうなのはなんとか堪えた。

 次に、バッグに手をかけた。

 肩からかけた、通勤用の、黒い大きめのバッグ。

 そこから麻耶に押しつけられた、例の綺麗な封筒を取り出した。

「……これ。下野さんに、……渡されたんです」

 本当は捨ててしまいたいと思うものだけど、我慢する。

 颯士に向かって差し出した。

 この行動は「見てほしい」という意味なのは伝わったようだ。

 颯士は丁寧に「見てもいいの?」と断ってから、封筒を開く。

 そして中身に目を走らせて……顔が強張った。

「こ、婚約パーティーするんですって。それで……招待を……」

 さすがに颯士のほうは見られなかった。

 無理やり明るくした声で、絞り出す。

 そうでもしないと涙が際限なく出てきそうだった。

「……そんな……」

 ぼんやりと颯士が呟くのが聞こえる。

 実際、絶句するような内容と行動だ。

 彼女だった女性を捨てた冬治。

 さらに、言ってしまえば彼氏を略奪した麻耶。

 そんな仕打ちをしてきた二人から、婚約パーティーへのお誘いなんて。

 明らかに嫌がらせだ。