暗い夜の中を、颯士の車は静かに走っていく。

 助手席に乗った美璃は、見るともなしに、窓の外を眺めていた。

 真っ暗な中に、夜遅くまで灯っている、都内の明かりが綺麗だった。

 美璃が一人暮らしをするマンションまで、美香の家からは、車なら三十分ほどかかる。

 あまり近くはないのだ。

 だから颯士に送らせてしまう形になって、悪かったかな、と思うけれど、義理の兄妹だから甘えてもいいかな、とも思った。

「美璃ちゃん、少しだけ事情は聞いたけど……なんとかなりそう?」

 運転席から颯士が聞いてきて、美璃は窓の外から運転席へ、視線を移した。

 そしてどきっとしてしまう。

 運転中だから颯士はもちろん前をしっかり見ていたけれど、端正な顔に浮かぶ表情は、明らかに美璃を心配してくれていた。

 それに、この寄り添うような優しい言葉。

 美璃の鼻の奥が、再びツンとしてしまう。

 でもなんとか堪えて、答える。

「わからないです……。お姉ちゃんにも話したけど、直属の上司に言われちゃったし、もう会議にかかってるって言うし……」

 夜景だけが輝く暗闇の中で、美璃はぽつぽつと話していった。

 颯士は黙って、たまに小さく頷きながら聞いてくれる。