経緯としては、このように単純なものだった。

 彼氏に浮気をされていた。

 それが会社同期の女の子だった。

 ついでに身に覚えのないミスなんてもので、上司に叱られたことまで、知られていた……。

「ミスなんてしてないのに……、なんでだろ。ついてないにもほどがあるって感じ……」

 振舞ってもらった夕食を食べ終えた美璃は、また少しだけしゅんとしてしまった。

 お皿を丁寧に拭きながら、ぽつんとこぼしてしまう。

「それはおかしいよね。どこかに相談してみたら?」

 夕食に使ったお皿を洗い終えて、タオルで手を拭きながら、美香も心配そうな顔で聞いてくれた。

 でも美璃は首を振るしかない。

「無理だよ……直属の上司に言われちゃったんだもの。それに、なんでかわからないけど、私の名前とサインまであったから……」

「そう……」

 美璃がそう説明すれば、美香はそれしか言えない、という相づちを打った。

 その場は沈黙になってしまう。

 でもここでうだうだしていても、なんにもならない。

 美璃は無理やり笑みを浮かべてみせた。

「うん、でもお姉ちゃんに聞いてもらえて、だいぶ楽になった。ありがとう、急に押しかけてきてごめんね」

 心が少し楽になったのは本当だ。

 だから素直に言葉にした。