退職を手配して、職場に残してた荷物と離職書類を宅配で受け取った。
あとは一週間ぐらいぼーっと空っぽで過ごしてた、はず。
記憶に留めるのもサボるほど、私はその期間、生活を投げた。
テレビをつけて流しインスタントで空腹を埋めてたくらいで本当に何にもしなかった。

でも、必要な期間だったと思う。
心の傷に薄皮がはってきてた。
血の流れ出さなくなった心は、ちょっと物事を取り入れる余裕がもどったみたい。
つけっぱなしにしていたテレビに映った、見知った景色に吸い込まれるように惹きつけられる。

──あ、おばあちゃんの家の近くだ。

母方の実家がある片田舎。
つい昨年亡くなった祖母の家は昔、周辺を治めていたそう。
それは家系ごと地元に愛されている。
祖母までは地域の人にお(ひい)さんと呼ばれて、敬われながらも可愛がられていたとか。
母はもちろん、遊びに行けば私も、祖母の血を引く娘として、地域の人はいつも温かく迎えてくれた。