「うっ、うえええっ」

洗面所で水を流し続けにして、吐いたり泣いたり。
何時間かやってたんだっけ? それともまだ何分か?
頭の中でぐるぐる考え続けて、研究と彼氏を偶然一人に盗られたというより、この二つは繋がっていたんじゃないかって、私を苦しめる。

世田さんは康二さんを通じて私の研究を盗んだんじゃないかって。

康二さんは彼氏だったから、忘れ物をとってきてもらたったりするために、机の引き出しの合鍵も渡していた。私の研究資料を世田さんに流すこともできた。
康二さん……世田さんに協力したんだ。彼の人間性を疑うしかなくなってしまったことも、とても辛い。
 
手先がつめたい。
ここから皮膚も、中身もぜんぶ凍りついちゃいそう。
寒気がして、今度はたくさんの毛布と布団をかぶった。
布と綿でできたやわらかい私の要塞。
信じた恋人に裏切られたし、やりたかった研究も、もう私の手の届かないところ。

私、無理だよ……これ以上は、ささいな負荷も受けたくない。