寒いな、と思ったところで巻き込むようにあたたかさに包まれた。
額に、ちゅっとキスを受ける。

「涼晴さん……」
「好きだよ、帆夏さん。……最中さんざん言った通り、僕は君が好き」

心臓が急に働かされすぎて、痛みだしそう、胸がぎゅーぎゅーする。
あ、胸、丸出しだ隠さなきゃ恥ずかしい。
もだもだし始めた私を、涼晴さんが抱き留める。

「帆夏さん、今さらだよ。僕は傲慢だから、もう君の表面的なところは全部知ったよと言わせてもらう」
「りょ、りょ、涼晴さん!?」

また顔にキスしてくる涼晴さんに、私は待ったをかける。

「こ、ここまでで……」
「帆夏さん?」
「私、つい、自分の気晴らしに涼晴さんを使っちゃった。でも一夜限りで良かったので。なので……」

言葉はふにゃふにゃと腰を無くしていった。

「帆夏さん、僕は本気だよ。言ったよね、帆夏さんが僕の心を動かした。これが結論だよ。僕は帆夏さんが好きなんだ。真剣に将来を考えてほしい」
「まって、……待ってください。涼晴さんは、雲の上の人で、私は……冴えないカフェの経営者で将来を考えられるような相手では」
「……優れた研究者でもある。血筋だって『お姫様のお孫さん』だ、悪くない」
「私っ、もう研究者じゃないです!」
「帆夏さん……っ」

ベッドから降りて、服を着た。

「すみません、私、御曹司の恋人って、それほどの覚悟できないです。助けられたし、いい思い出をもらいました。あとは……放っておいてください」
「帆夏さん……」

はじめて彼に断りを入れた時よりも、もっと悲痛な顔をさせてしまった。
私は頭を下げて、彼の前を去った。