「そんなに? たしかに北園さんすごい威力のカッコ良さだけど」
「やー、神はあんな造形の男の人もつくってたんだねえ! 私の世界にはああいう美しい男って現れたことなかったから存在しないもんかと思ってたわ」
「花世ちゃん、それ私も似たこと思った」

笑い合っているとお店のドアが開いて北園さんが入ってきた。
花世ちゃんは「じゃ、私は端の席で御曹司のご尊顔を楽しませてもらうわ」と移動する。
さらにさらに! 入り口のベルが鳴って、もう一人お客さんが入店してきた。
一度に三人お客さんがいるなんて贅沢!

三人目のお客さんは、大きなリュックを背負う壮年男性だ。
リュックからミニサイズのツルハシがぶら下がってるから、採取もする鉱物好きな人が寄ってくれたのか、と思った。

席を案内して、花世ちゃんの飲み物を用意して……そして、見てしまった。
三人目のお客さんが、大きく口を開けたリュックの中へ、うちの展示物の鉱物標本を入れたのだ。